2004年9月18日土曜日

旅日記-紀伊半島・本州最南端に行きたい16<那智(なち)>


2004年9月21日

登場する地:大門坂(和歌山県)、那智大社(和歌山県)、那智の滝(和歌山県)


那智周辺を地図で見ると、那智の滝や那智大社は10㎞ほど内陸部にある。どうりで行けども行けども着かなかったわけだ。およそ2時間の旅程であった。今思えばよく歩いたものだ。

ようやく目的地付近の大門坂に到着したのは、もう午後の4時前後だったと思う。大門坂は緩やかな石段と両脇に樹齢800年ほどの杉並木が数百メートル続く道である。日が陰り始めていた。

苔むす石段を登っていると、前方にヒールを履いた女性がひとり見えてきた。ヒールのため苦労して石段を登っている。旅に出会いはつきものである。僕はその女性に声をかけ、背中に彼女を背負って一緒に大門坂を登っていった。

・・・わけはなく、その女性を普通に追い越して僕は先を急いだ。日も暮れかけて色々見て回れなくなる可能性もあったし、そもそも見知らぬ女性に声をかけれるほど僕は人間が出来ていない・・・。

杉並木の大門坂を過ぎ、那智大社に上り着いて振り返ってみたら、残照に輝く緑の山肌が向かいに見えた。美しいと思った。視線を移すと那智の滝も見える。改めて熊野まで来たんだという感慨が深く沸いた。

那智大社はほどほどに見て回った後、那智の滝の滝壺近くまでいってみた。細く白い滝だった。落ち口を見上げると注連縄が張ってあり、神聖さを物語っていた。ずっと見ていると、白い竜が天に昇っているようにも見えた。

バスはあっという間に駅に着く。見覚えのある、歩いて辿った道が窓の外に見えては過ぎた。苦労して歩くことに何の意味があるのだろう。バスに揺られながらふとそんなことを思った。でも今(2013年1月)思い返せば、歩いていって良かったと思う。その時のつらさが今浄化して良いイメージになり記憶に刻まれている。


つらい思い出の方が年月をかけて浄化されたとき何にも得難い記憶の財産になる。


この日で旅の目的は半分果たした。普段一人では居酒屋に行かないが、その夜は新宮駅付近の焼き鳥屋さんに入ってみた。焼き鳥を食べ、一杯だけビールジョッキをあけた。

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